【日本人講師】導電性粒子充填ポリマー材料の温度―電気特性

PTC特性の発現メカニズムとポリマー・フィラー相互作用を解析し、永久ヒューズ等への応用を解説。

2026/09/18(金),09:30-16:30

ポリマーに大量の導電性粒子を充填すると、温度上昇に伴い電気抵抗が増加します。この材料は常温では低抵抗ですが、高温になるとポリマーの体積膨張により導電性粒子間の距離が広がり、抵抗が上昇します。この素子を回路の上層に実装すれば、回路の過電流時に素子がジュール熱で昇温して抵抗が増加し、下層回路への電流を遮断します。異常が解消すれば温度が下がって抵抗が低下し、電流が再び流れます。このため、交換不要の永久ヒューズとして使用できます。この素子をリチウムイオン電池などに応用すれば、電池の安全性と信頼性を高め、エネルギーの貯蔵・変換に重要な貢献をもたらします。基礎研究では、ポリマー中の導電性粒子の分散状態、転移温度の違いと電気抵抗を解析し、新材料を開発します。

図.PVDF/Ni複合材料のPTC特性        図.PVDF/CB複合材料のPTC特性

金属粉末、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)などの導電性フィラーをポリマーに充填した導電性フィラー分散ポリマー複合材料は、フィラーが複合材料中にネットワークを形成して導電パスをつなぐことで、特殊な電気特性を示します。特に結晶性ポリマーの導電性複合材料は、温度上昇に伴い抵抗率が増加する正温度係数(PTC: Positive Temperature Coefficient)特性を示します。PTC特性を持つ材料は、永久ヒューズ・温度センサー・ヒーターなどに使用できます。永久ヒューズに応用する場合、室温抵抗が低く高温抵抗が高いこと、そして抵抗の温度上昇に対する傾きが急峻であることが求められます。この要求を満たす導電性複合材料を作製するには、PTC特性の発現メカニズムの解明が非常に重要です。

本講演では、ポリマー中のフィラーの位置、室温抵抗を下げながら高温抵抗を高めるトレードオフの関係、PTC特性の発現メカニズムとポリマー―フィラー相互作用について詳述します。

一、導電性フィラー分散ポリマー材料の紹介
1-1. PTC(正温度係数)特性
1-2. 複合材料の導電性発現メカニズム
1-3. ポリマーの種類とPTC特性の関係
1-4. CBフィラーのPTC特性—最適なCBの選択
1-5. 金属フィラーのPTC特性—最適な金属の選択

二、ポリマー結晶化度とフィラー分散ポリマーのPTC特性の関係
2-1. ポリマー結晶化度の評価方法
2-2. ポリマー結晶化度とフィラー分散ポリマーのPTC特性
2-3. フィラー充填量とポリマー結晶化度
2-4. フィラー充填量とPTC特性

三、溶融後冷却速度が導電性に与える影響
3-1. 溶融後冷却速度とポリマー結晶化度
3-2. ポリマー結晶化度と室温抵抗率
3-3. ポリマー結晶化度とPTC特性

四、結晶性ポリマー/Ni複合材料のPTC特性
4-1. Ni充填率と室温抵抗率
4-2. Ni充填率とPTC特性
4-3. ポリマーとフィラーの相互作用
4-4. FITモデル

五、ポリマー分子量と複合材料の導電性
5-1. HDPE分子量と導電性
5-2. PMMA分子量と導電性

六、非晶性ポリマーと複合材料のPTC特性
6-1. 非晶性ポリマー中のフィラー分散性(SEM写真)
6-2. 非晶性ポリマーのPTC特性

七、ポリマーブレンド/Niの室温抵抗とPTC特性
7-1. HDPE/PMMA/Ni複合材料の電気特性
7-2. HDPE/PVDF–Ni複合材料の電気特性(混練順序の違い)
7-3. HDPE–Ni/PVDF複合材料の電気特性(混練順序の違い)
7-4. PVDF/PMMA/Ni複合材料の電気特性

八、複合材料PTC特性の定量分析
8-1. パーコレーション理論における閾値の定義
8-2. ポリマーの体積膨張と結晶化度を考慮したPTC特性
8-3. 絶縁領域の抵抗率における見かけのフィラー充填率